うっかり侍UO道中

MMORPG、ウルティマオンライン。

新酒場 HighJinks

すっかり放置になってしまい申し訳ない。
とりあえず、次の話も下書きまではできているものの、いろいろ悩みどころが……。とそれはまぁ置いておいて。
ほったらかしにしている間にこのページのメインコンテンツであった折れ矢が無期休業となるという事態がありました。
そこで今回、新たにRPerたちの受け皿として酒場を開店することになりました。
場所は折れ矢と違い私宅を利用したものですが、折れ矢の依頼システムを簡易化して取り入れています。
試験運用を終え、正式にオープンとなりましたので取り急ぎご報告まで。

『High Jinks』(ホームページ)
  1. 2008/06/01(日) 00:33:00|
  2. HighJinks
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漆黒騎士団 =3=

 漆黒騎士団と対立するにあたり、真之介には会いたい人物がいた。
 ベルリオーズ。折れ矢で何度か漆黒騎士団の動向を調べているのを見たことがある。漆黒騎士団について、なにひとつ知らない真之介にとっては基本的な情報を得るには丁度いい相手だし、うまくいけば協力関係を結べるだろう。
 数日後、折れ矢で再び彼女の姿を見ることとなった。ちょうどリックが先日のYewでの成り行きを説明しているところだった。
 一通りの話が終わり、概ねの状況が伝わったところで 真之介は改めて声をかけた。
「聞いての通りだ。場合によっちゃあんたの力になれるかもしれないし、こちらもできれば力を借りたい」
「…この戦い、命を落とすかもしれませんが、その覚悟はおありですか?」
「是非もねえ」
 ベルリオーズの問いに真之介は即答した。そして3人は宿の二階に場所を移す。
「まず、漆黒騎士団について教えてくれ。あれはそもそもどういった集団なんだ?」
 根本的な話だった。それで喧嘩をふっかけるのだからノリって怖い。
「では、漆黒の騎士団についてお話しますが、これはあくまでわたくしの目から見た彼らということになります」
「それでいい。頼むよ」
「過去に国家がいくつかそんざいしたのはご存じかしら」
「マティアスだとかセレスティアだな。直接は知らないが」
「スパークさんのSST」
「えぇ、それに聖徳の王国。聖徳の王国は徳を信仰し、公国は均衡を、そして漆黒騎士団は混沌の教えを信仰していました。
 が、それはLoad BlackThorneが唱える混沌とは程遠いもの。彼らはLoad BlackThorneの教えだと主張するでしょうが。
 FoAと名乗る秘密結社と結託し、世界を動乱の渦へと叩き込んだこともあります」
「なるほど」
「彼らは現在、過去の忌まわしき遺産、魔王の指輪を所持しているとも聞いています」
「魔王の指輪?」
 真之介とリックは声を揃えて首をかしげる。
「嘗て、その指輪が齎した災い。そのひとつにどんな人間でもその魔気にふれ狂気と化したものがあるのです。
 おそらく一刀斎様は何かしらの呪いを受けたのかも知れません。その根源となる力はおそらくその指輪でしょう。
 わたくしも指輪戦線に立ち会ったわけではございませんが……」
 ずいぶん根の深い話になりそうだ。
「つまり、漆黒騎士団を根本から叩くには、その指輪をどうにかする必要がある、と」
「ええ、たとえ一刀斎さまを救出できたとしても、また同じことが起こる可能性は十分にあります。
 例えば真之介様、例えばリック様、あるいはわたくしが指輪の魔力にあてられるということも十分に考えられることなのです」
 漆黒騎士団について基本的な情報を得たあとは、これからの話だった。
 真之介もリックも生粋の戦士であるがゆえに魔法呪術に関する知識は皆無に等しい。過去を知っているとはいえ、ベルリオーズもそのあたりに関しては大きな差はないだろう。その種の専門家のアドバイスがほしいところだ。
「薔薇屋敷の魔女、というのに当たってみようと思っている」
 先日のYewでの一件でも薔薇屋敷はSRから服従を強いられたらしい。ならば協力を得ることも不可能ではないだろう。
「薔薇屋敷の魔女ですか……」
 軽い気持ちの真之介だったが、ベルリオーズは眉をひそめた。
「かつて、先ほど話に出た国々がまだ健在だったころ、何度か姿を現したことがあります。
 非常に強い力をもった魔女ですが、力を借りるには相応の代償が必要になるでしょう……」
「けどまぁ、ほかにいくアテもないしな。とりあえず当ってみるわ」
 リックとともに薔薇屋敷に向かうことを約束する真之介。そしてベルリオーズは仲間を集めるために青空酒場のスパークに相談することに。この日はこれで別れることになった。

 次の日、真之介とリックはYewにある薔薇屋敷を訪れた。
 中には若い女性が一人、ホームバーのカウンターの奥に佇んでいる。挨拶をして来意を告げると、魔女−ベアトリクスは妖艶な微笑を見せた。
「わたしの力を借りたいというならば、報酬が必要だよ」
「たとえばどんな?」
「そうだねぇ……。お前の一番大事な物はなんだい?」
 真之介はしばし考えてから口を開いた。
「友達……かな?」
 そもそもが今回の騒動に飛び込んだのも理由はひとえに一刀斎との友情がゆえである。
「ならば、それをあたしにくれるかい?」
「うーん、別にこれはやり取りできるもんじゃないからなぁ…」
「じゃあ、僕らが魔女さんのお友達になるというのは」
 リックが口をはさむ。それならずいぶんと安上がりだが、そう簡単にはいかないだろう。
「漆黒騎士団がここにきたときも、わたしは同じように協力への代価を求めた。『向こう百年の贅沢』というね」
「そりゃまた…」
 具体的にそれがなにを指すのかは皆目見当がつかなかったが、とりあえず真之介たち貧乏人の薄っぺらい財布では実現不可であることだけはたしかだ。
「で、漆黒騎士団はその条件を呑んだんですか?」
 リックの問いに答えたのは意外なものだった。
 二人の背後に不意になにものかの気配が現れる。漆黒のローブに身を包んだ男。チャーリーだ。
「チャーリー、盗み聞きとは行儀がよくねえな」
 だが、それには答えずチャーリーはいつもの闇笑を浮かべている。
「無駄ナ足掻キダナ。貴様ラニ残サレテイルノハ服従カ死。サァ、ドチラヲ選ブ?」
「その二択に俺の答えはねえ。俺の答えはたったひとつだ。てめーは泣かす」
「馬鹿メガ…」
 チャーリーがレブナントを放つ。他人の住居の中だが仕方ないと、変な遠慮をしつつも二人は得物を抜いた。
 瞬く間にレブナントを叩き伏せると、ついでとばかりに二人はチャーリーと飛びかかった。劣勢を感じたチャーリーは再び姿を消してしまう。意外なあっけなさを訝しく思いながらも、真之介たちは剣を納めた。
 残されたベアトリクスは、しばらく慎重に真之介たちの様子をうかがっていた。だが、二人には今のところ害意はない。チャーリーとの戦闘にも手出しはなかったし、正直無駄に敵を増やしたいと思うほどに二人は好戦的ではなかった。
 リックが口を開く。
「つまり、あなたと漆黒騎士団はすでに協力関係にあったということですか?」
 たしかに、そうでなければ屋敷の中に潜むということはできない。
「そう、彼らは私の要求を呑んだんだよ。『向こう100年の贅沢』というね」
 くそう、財力の差が憎い。真之介は人知れず懐のしけた財布を握り締めた。
 やがてベアトリクスはゆっくりと立ち上がり、家の玄関へ向かった。
「さて、少しこの森を散歩でもするかね」
 ベアトリクスにつれられて、ふたりはYewの森を歩くことに。歩きながら、かつてこの地にはいろいろな国家があったこと、そして魔女殿はそのいずれからも支配にも屈することなく、契約によってのみその力を貸し与えていたことを聞かされる。その代償は国家の宝だったり、なんだったり……。
 歩いていると、どこからか馬の足音が聞こえる。青い服の女がこちらへやってくるのが見えた。
 真之介にはその顔に見覚えがあった。
「ベア、こんなところでなにをしているの。それにその二人は…」
 たしか名前はカレン。折れ矢にも何度か見えた顔だ。
「ちょっと散歩に出てきただけじゃよ」
「あなたはたしか、スパークさんの彼女さんでしたっけ」
 そうだったのか。リックの言葉は俺のまだ知らない情報だった。
 薔薇屋敷に戻ると、カレンにこれまでのいきさつとさきほどあったチャーリーとの戦闘についての説明をする。
 カレンは魔女殿の安全が一番の優先次項、ということらしい。
 つまり、魔女殿が漆黒騎士団と協力関係にあるとすれば、真之介たちは敵ということになる。
「私もまだ死にたくはないし、魔女としての矜持もある。SRとの契役を違えることはできぬ」
 魔女殿でもSRは恐れるに足る存在か。いまさらながらだが、やっぱりノリって怖い。内心で溜息をつく真之介。
「だけど」
 ベアトリクスはそこで一度言葉を切った。
「あんたたちにヒントくらいはあげられる」
 二人はそこまで哀れみを誘う顔をしていたのだろうか。だが、思わず顔が緩むのを止めることが出来ない。
「是非ほしいね」
「是非ください!」
 あまりの豹変振りにカレンが形のよい眉をしかめた。
「なんなんだ、この軽い男たちは、信用できるのか?」
「よいではないか。古い因縁に縛られぬ、自由なものたちだ。いいかい、よくお聞き」
 ここで真之介たちはカレンを含む4名の人物の名を聞くことになる。
「その名前をよく覚えておくんだよ……」
 まぁ、なんだかんだで完全対立はしなくてすみそうな……。
 帰り際、真之介はふと気がついて腰の得物に手をかけた。
「そうだ。代償を払うぜ」
 契約でしか動かないのが彼女の流儀であるなら、ここでそれを払わないわけにはいかない。
 実際、いま真之介たちにどんな形であれ力を貸すことは、漆黒騎士団との契約違反ととられても仕方のないことでもある。
 それに対する感謝の気持ちもある。ほかに目ぼしいものが無かったというのもあるが、真之介は愛刀『木刀』を魔女殿に差し出した。
「国宝級とまではいかないが、俺の大事な相棒だった刀だ。こいつで支払うぜ」
 実のところ、本当に偶然なのだが今日は主武装の『無銘』が手入れをしている最中で、出掛けに丸腰でいくのも心配だとたまたま持っていたのが『木刀』だった。だが、性能面で『無銘』に一歩譲るとはいえ、『木刀』は真之介が出雲で一番長く使ったまさに相棒と呼ぶべき一本だ。そういう意味では『無銘』よりも手放すのは痛い。
 だが、そうでなくては魔女への代価には相応しくないだろう。
 唖然とするリックを後目に魔女は真之介の差し出した『木刀』を受け取った。
 そして真之介たちは薔薇屋敷をあとにした。

「真さん、なにも武器を渡すことは……」
「まったくだ。あー、もったいねえ」
「自分で差し出しといてなにをいって……」
「ノリって怖いよなぁ」
  1. 2008/05/05(月) 23:19:13|
  2. RP『漆黒騎士団』
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漆黒騎士団 =2=

 真之介が気がついたとき、そこにはもう一刀斎やチャーリーの姿はなかった。
 リックもすでに回復したようだ。いつまでもこんなところで寝ているわけにはいかない。
「二人を止めるぞ。まずは手を集めよう」
 3人は手分けをして仲間を集めることにした。真之介は折れ矢亭に飛んだが、さすがに営業日ではないこともあり、人の姿は見えない。ヘイブンやブリテインといった場所も一応当たってみたが、やはり知った顔はいなかった。
 ひとりでも、この際ペンタでいいから戦力がほしいというのが真之介の心情だったが、無いものを嘆いていても仕方が無い。
 真之介は厩舎に寄って、預けていたレッサーヒリュウのテキロを呼び出した。
 寝ているところを起こされたせいか、幾分不服そうなまなざしで真之介を睨んだテキロだったが、やれやれといった風情で真之介に背を向けた。
「一つ頼むぜ」
 沼竜の鉄之助とは違い、気性も激しく聞き分けのない相棒だったが、ここ一番というときには頼りになる相棒だ。
 その背を軽く叩いてからまたがると、真之介は再びゲートへのルーンを取り出し呪文を唱える。
 あとは二人がどれだけ集められるかだ。

 ゲートからYewへ飛んだが、SRの二人の行方はなかなか掴めなかった。
 なるほど、戦力としては一刀斎がいれば多くは必要ない。人数が少ない方が邪魔は受けにくいということだろう。
 真之介はあてもなくYew一帯をテキロと共に駆けずり回った。
 どのくらい走っただろうか。真之介の視界の先にシュリの姿が飛び込んできた。
 どうやら一人と一匹でSRに立ち向かうというケースはなくなりそうだ。
「シュリ、首尾はどうだ」
 レッサーヒリュウ一匹しか成果のなかった真之介と違って、シュリたちはしっかり増援をつれてきたようだ。
「飛来雲さんと連絡が取れました。あとはリックがスパークさんたちを連れて来てくれるそうです」
「ありがたい。そいつは助かる」
 シュリの案内で真之介はまもなくスパークたちと合流することができた。
 メンバーは合計で5人。中には真之介の知らない顔もあったが、心強い限りだ。
「一刀斎殿がSRに協力させられている」
 真之介は改めて状況を説明した。人質と呪いのこと。そしていまもYewのどこかにいることを。
「すまないが力を貸してくれ。俺たちだけじゃ一刀斎殿をとめることはできなかった」
 スパークは何事かを考えているようだったが、すぐにうなづいてくれた。
「まずは彼らの行方を追おう」
 最初に向かったのは現在のSRの本拠。だが、やはりまだ戻ってきた様子はない。人質もここにいる気配はなさそうだった。
 その周囲を探しても二人の姿を掴むことはできなかった。
 二手に分かれることになり、真之介たちはゲートの北へ向かうことに。そして再び長浜城の近くまできたときだった。
 いる。
 シュリも同じことを感じたのだろう。気配のしたほうへ視線を向けた。
 だが、気づいたのはあちらもだったのだろう。臨戦態勢に入った二人の前に、チャーリーと一刀斎が再び姿を現した。
「懲リズニ戻ッテキタトイウワケカ」
「まぁそういうことだ。邪魔をさせてもらうぜ」
 真之介はテキロから飛び降りると、テキロをチャーリーに向かわせ、自分は一刀斎に斬りかかる。
 チャーリーを守るべく、一刀斎はテキロの方へ向かい、シュリやチャーリーの放ったレブナントも加わった乱戦が始まった。
 真之介が騎士魔法、Divine Furyの雄叫びをあげる。この声が届けば、仲間も集まるはずだ。
 
 戦況はやはり一刀斎という強力な手札を擁するSRが有利。増援はまだ到着しない。
 テキロは一刀斎の刃に傷つき、すでに戦う力を失った。
 一刀斎の一撃が真之介を捉えると、斬撃のダメージとは別の痛みが真之介を襲う。
 毒か。
 思わぬ攻撃を受けて意識が飛びそうになったそのときだった。
 背後から蹄の音と数人の気配が近づいてくるのがわかった。
 スパークたちだ。
 間に合った。その安堵で思わずその場にへたり込んだ真之介だったが、すぐさまシュリが手当てに入る。
 スパ−クがチャーリーに向かって何事かを話しているが、朦朧とした真之介にははっきりとは聞こえなかった。
 気がつくと、リックの姿がない。真之介はシュリに尋ねた。
「ところでリックは?」
「薔薇屋敷の魔女さんのところにいってるです」
「薔薇屋敷?」
 寡聞にして真之介の知らない場所だったが、SRがYewの侵攻にあたり無視することができない場所のようだ。
 やがてスパークたちも剣を抜き、戦闘が再開される。
 毒のダメージが抜けない真之介は、それをただ見守るしかできなかったが、数で圧倒するはずのこちら側とSRの力はほぼ拮抗。
 戦場は膠着状態に陥った。
 やがて、剣を収めたのはSRの方だった。
「一旦、ここは退こう」
 一刀斎が刀を鞘に収めると、それに倣いスパークたちも剣を下ろす。
「…………」
「行クゾ、一刀斎」
「……御意」
 チャーリーも手傷を負ったようだったが、例の邪悪な笑いを浮かべたまま一刀斎とともにその場を去った。
 一応の危機を脱したことで、緊張の糸が切れた一同の間に重苦しい安堵が広がる。
 だが、何も終わってはいない。まだ物語は始まってすらいなかった。
 この物語は多くの人々を巻き込み、大きな広がりを見せることになる。
  1. 2008/04/15(火) 20:09:37|
  2. RP『漆黒騎士団』
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漆黒騎士団 =1=

 諸君。雌伏ノ時ハ過ギタ、苦渋ヲ舐メコレマデ耐エテキタノモ終ワリダ。
 心ニ闇ヲ持ツ者、世界ニ拒絶サレシ者、ソシテ嘗テノ栄華ヲ知ル者、
 今コソ、漆黒騎士団ニ集イ、ソノ才能ヲ発揮シ、ブリタニアニ知ラシメルノダ。
 我ラノ強大ナ存在ト、ソシテソノ強さヲ。
 生キル意味ヲ無クシ、日々、怠惰ニ過ゴスコトモイイダロウ。
 ダガ、閃光ノヨウニ輝キ、華々シク散ル。コレコソ貴君ラガ求メテイルモノダ。
 我ラデブリタニア全土ヲ掌握シ、世界ノ安寧ヲモタラソウ。


 漆黒騎士団がYewへの侵攻を宣言した。
 そんな噂が鳴神真之介の耳にも入ってきたが、その時は別にさしたる興味も湧かなかった。
 鳴神真之介。看板を背負わないのが主義という素浪人。とはいえ、人嫌いというわけでは決してなく、友人知人も少なくない。要は単に怠惰なだけなのだろう。
(仕事でも入れば話は別けどな)
 一応は冒険で日銭を稼いで暮らしている身としては、切った張ったは嫌いではない。もっとも、普段はモンスターが相手なので人間相手に武器を振るうことはあまりないのだが……。
 漆黒騎士団、通称SR。この地に流れてからそれほど長くは無い真之介は、それがどういった集まりなのかもよく知らない。そこのチャーリーという男を見る限りは、名前のイメージ通りの胡散臭い集団なのだろうが、折れ矢で求人広告を出しているあたり、悪の組織というにはいささか牧歌的な雰囲気を感じる。
 いずれにせよ、真之介にとってSRの動きというのは大して興味のあるものではなかった。

 だが、話は真之介にとって意外な展開を見せる。
 いつものようにブリテインの銀行前でたむろしていると、知り合いの女の子から聞き捨てならない話を聞いたのだった。
 伊東一刀斎がSRの軍門に下ったという。
 剣豪、伊東一刀斎。出雲の地で真之介が知る限りにおいて無双の強さを誇る初老の剣士である。
 折れ矢にも出入りがあり、共に仕事をこなすことも少なくない。いささか頑固なところもあるが、基本的には気のいい好々爺だ。
 その一刀斎が孫を人質に取られ、SRへの協力を強要されている。こうなれば友人としては見過ごすことのできる事態ではない。

 侵攻の当日。フェルッカのYew、長浜城に真之介は向かった。一刀斎の居城であり、彼の剣術道場でもある場所だ。
 門の前に一刀斎の姿が見えたが、ほかにも人影が見えた。
 黒い和風の着物に身を包んだ若い娘がいる。
 見覚えがある。忍者集団『兜の里』のくのいちで、また一刀斎の弟子でもあるシュリという娘だ。
 何度か折れ矢の仕事をともにやったことはあるが、概ね人数が多いときばかりであったので、顔を見知っているくらいの認識しかない。だが、一刀斎との稽古をみたときはなかなかの腕前だった。
 もう一人は赤い裃のエルフ、竜騎兵のリックだ。こちらも一刀流の門下生で真之介もよく知っている男だ。
「ししょー…」
 シュリたちもおそらくは一刀斎のSR入りを耳にしたのだろう。
「シュリ、リック、去るがよい。戦場であえばワシはSRの尖兵。立ち塞がるものは誰であろうと斬る」
「一刀斎殿」
「おぉ、真之介殿」
「話は聞いたぜ。どうにかならないのか」
「どうにもならんよ。人質だけではない、ワシの体にはチャーリーの呪縛がかけられている」
 寂しそうに笑うと、一刀斎は懐から黒い箱を取り出して見せた。
「この箱をどうしても手放すことができん。これがある限り、ワシは奴の従順な下僕じゃよ」
 箱をしまうと、一刀斎は穏やかだが断固とした口調でいった。
「もうすぐここは戦場になるじゃろう。一刻も早く立ち去れい」
 話はそこまで、ということらしい。一刀斎は3人に背を向けて門をくぐろうとした。
「一刀斎殿」
 真之介は一刀斎の背中に声をかけた。
「俺は一刀流の看板は背負っちゃいないが、友のために振るう剣はあるつもりだ」
 真之介はいう。
「一刀流の危機、このまま見過ごす気はねえぜ」
「……」
 一刀斎は無言のまま門の向こうに姿を消した。

「さて、どうする」
 成り行き上、行動を共にすることになったシュリ、リック、そして真之介の3人は長浜城から少し離れた場所で話し合った。
「とりあえず師匠を止めないと」
「ですー」
 とはいえ、剣豪伊東一刀斎。3人がかりで掛かっても止められるとは限らない。まして、生かさず殺さずなどという芸当は至難の業だろう。
 怪物相手の戦闘であればリックも真之介も相応の自負はある。しかし、人間相手の戦いとなればその実力は必ずしもイコールで結ばれるものではない。おそらくこの中でもっとも手馴れているのはシュリであろうが、忍者という性質上火力を期待できるものではない。
「ふぅ……、どうしたものかね」
 だが、考えていてもいい案がでてくる気配はない。
 3人がしばらく考えあぐねているときだった。
「チャーリーが動き出すわ」
 気が付くと、3人のすぐそばに一人の女性が立っていた。知っている顔ではない。
「どうするの? あなたたちは」
 そんなことは決まっている。どうしたらいいかはわからないが、なにをするべきかはわかっている。
 真之介たち3人は再び長浜城へと戻っていった。

 一刀斎の隣に漆黒騎士団参謀チャーリーがいる。
 チャーリーは3人の姿を見ても、普段と同じ不気味な笑みを止めることはなかった。
「チャーリー、一刀斎殿は開放してもらうぜ」
 無論、チャーリーが頷くことはない。
「コノ男ガ、自ラ望ンダコトダ」
 そういうと、さもおかしそうに喉の奥から搾り出すような笑いを漏らす。
「人質とっていうセリフじゃねえだろ」
「ナラバドウスル?」
「別段てめえにゃ興味はなかったが、こうなったら話は別だ。徹底的に邪魔させてもらうぜ」
 真之介は太刀を抜くとチャーリーに突きつけた。
「リック、シュリ、即席パーティで心許ないが力を貸してもらうぜ!」
 狙いはチャーリー一人。幸い、まだ一刀斎が動く気配はない。
 チャーリーはレブナントを召喚して応戦したが、直接的な戦闘においてはそれほどの技量はないのだろう。
 意外なほどあっさりと決着はついた。
 倒れる間際においてもまだ笑みを貼り付けたまま崩れ落ちるチャーリー。
 あっけなさすぎる。さすがにそう感じたのは真之介だけではないだろう。
 見ると、一刀斎が厳しいし表情を浮かべている。
「師匠?」
「なんということを……」
 リックの問いに一刀際は搾り出すように呟いた。
「!!」
 目に見えない『何か』が真之介たちに叩きつけられた。殺気だ。
「できれば、こういう形にはなりたくなかったが」
 一刀斎の剣先が真之介たちに突きつけられる。
 さほど期待はしていなかったが、チャーリーを倒せばそれで解決という話にはならないらしい。
 稽古のときとはまるで違う一刀斎の迫力に3人は圧されていたが、すぐに覚悟を決めたようだ。
「退くがいい。いまならまだ間に合うぞ」
「言った筈だぜ、このまま見逃す気はねえってな」
 戦闘がはじまった。
 3人は改めて剣豪伊東一刀斎の力を思い知ることになる。まずはリックが倒され、真之介も危ういところまで追い込まれる。シュリも援護に入ったがペースは常に一刀斎が圧倒していた。
 やがて、勝負はついた、とばかりに一刀斎は構えを解いた。
「退けい。おぬしらでは我らを止めることはできぬ」
 だが、そこで素直に退くことができる者はいなかった。
「一刀斎殿、喧嘩は勝ち目のあるなしでやるんじゃねえ。戦う理由があるからやるんだ。違うか?」
 ふと、一瞬だけ一刀斎の表情に笑みに似たなにかが閃いた。だが、それはほんのわずかの間で、すぐにその顔は修羅のそれに戻る。
「よかろう。ならば来るがいい。シュリよ、手出しは無用じゃ!」
「鳴神真之介、推して参る!」
 真之介は一刀斎の間合いに飛び込むと、深く腰を落して太刀を振るう。もはや一歩も退かぬという覚悟だ。
 対する一刀斎もそれに応じる形で木刀を振るった。
 互いに見切りに関しては卓越した能力を持っている。互いの攻撃はなかなか相手を捕らえることができない。
 互角とも思われる攻防を切り崩したのは、やはり一刀斎だった。
「むぅ……、ならば120%…!」
 爆発的に一刀斎の反応速度が変った。それまでなんとかかわしきれていた一刀斎の攻撃が次々に真之介の身体を捉えるようになる。
「くっ!」
 差は次第に一方的になり、やがて真之介も膝を折る。
 とどめの一撃を受け、真之介も気を失った。
  1. 2008/04/09(水) 13:19:23|
  2. RP『漆黒騎士団』
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今日の折れ矢 3/22 『ダブルアックス』

 ここんところの日記が「単なる記録」と化しており、以前のような読んで面白い日記が書けなくなっていた為、しばらく放置となっていました。申し訳ない。

 さて、折れ矢では先日からアユアユがバイトとしてウェイトレスをやっている。やはり店側に女性がいるというのは雰囲気の面で多大なものがある。
 ちょうど同じころに宿に着いたホッキとともにロイアスに現在の依頼を確認すると、今回はこんな依頼が入っていた。
「徳之島の浪人を退治してほしいという依頼です。倒した際には、彼らのもっている武士道の本を討伐の証としますので、回収してきてください」
 治安維持が目的なので急ぐ話ではないということだが、とりあえず募集は残り95。まぁいまさら遅れを取ることもない相手だ。一気に全部とはいかないが、準備運動がてら軽く流してこよう。
 俺とホッキは誉島の武士道道場に飛び、それぞれ行動を開始する。奴らもこちらと同じく武士道スキルを操り、しかも生者にはない打たれ強さを誇るが基本的にはそれだけだ。打撃においてはさほど恐れるに値する敵じゃあない。道場の周囲をうろついているのを数人叩き伏せ、南門から道場内部にお邪魔する。
 20冊ほどの本を回収すると、財布の中身も重くなってきたので、一度宿に帰還することに。
 ホッキもすでに戻ってきており、何冊かは集めてきたのだろう。報酬は1冊につき1000gp。時間にしてはちょっとした額になった

 さて、店にはバイロンが来ており、B革を集めるのに人手を探しているという。浪人相手よりは退屈しないだろうと思いついていくことに。メンバーは打撃戦力として斧戦士リーシャと回収係ということでアユにも来てもらうことになった。
 場所はアイスダンジョン、標的はもちろんホワイトウィルム。ということで、場所を移動するまでに引っ張ってきた有象無象を始末してWW狩りの体勢に入ったわけだが……。
 今日俺がもっていた得物は特効の『屠竜』ではなく常用の『無銘』だったわけだが、それでも一撃で100そこそこは与えることができる。大体総量の1/5くらいだろうか。まぁこんなもんだろうと思って、刀を構えなおした瞬間。ズシン、と大きな音がしてWWの巨体が崩れ落ちた。……はい?
 見ればリーシャもまた一撃をWWに加えたところだった。しかし、残りの体力は推定でも400はあったはずである。ありえん。
 彼女の得物は上位特効ではあるものの、それ以外はさして珍しい性能ではないダブルアックス。そう、斧である。おそらく伐採のスキルを極めているのだろう。さらに騎士の力を最大限発揮した場合、与えうるダメージは、
「そうですわね。だいたい230〜240といったところでしょうか」
 そしてSPMのダブルストライクを使えば、一撃で入るダメージは約2倍。総量400を十分に越える値である。
 ちなみに、俺は野太刀をもってあらゆる手段を駆使しても一撃の威力が200を超えたことはない。なるほど、ダブルアックスが斧の中で人気の武器だといわれる所以がこれか。
「あー、こいつはなかなかにショックだぜ」
 先日、白豚がレンドに張り付いているのを見たときの衝撃も結構なものだったが、こいつぁいい勝負だ。
「狩りというよりは生産工場だな、これは」
 ありえない早さで積み重ねられていくWWの骸を身ながら呟いたバイロンの意見にはまったくの同意。1000枚の革を集めたあたりで撤収したが、戦闘らしい戦闘はむしろ来たときの露払いくらいだったといっても過言じゃないだろう。
 報酬のやりとりをしていると、宿にきたニコットが先ほどの浪人狩りの話を聞いて仕事に出て行った。まだ時間もあるので、俺ももう少しこちらをこなしておくことにしよう。
 先ほどと同様、道場に乗り込んでだいたい二人1セットの要領で倒していく。たまに忍者が混じることもあるが、基本的にやられるほどの危機感は感じることなく進められた。 
 さらに20冊の本を持ち帰ると、ニコットもすでに戻っており取ってきた分をロイアスに渡したところらしい。
 俺の持ってきた数を見て「私よりあとに出て行ったのに……」と驚いていたが、世の中上には上がいるのだ。リーシャのあのダメージ量を見ると、とてもじゃないが得意になる気はしなかった。
 ちなみに、この浪人狩りはこのあと現れた陽炎、シュリの兜の里コンビによってノルマを達成。意外に早く終わってしまった。
 必殺の一撃も不死身の身体も一介の戦士としては憧れてやまないものではあるが、どっちも俺の生きかたとは違いすぎる。まぁ、俺は俺のやり方でいこうじゃないか。
  1. 2008/03/23(日) 23:56:19|
  2. 折れ矢の仕事
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プロフィール

真之介

Author:真之介
鳴神 真之介:
飛鳥出身、現在出雲在住の野太刀マニヤ。
主な活動場所は徳之島、及びサーペンツホールド冒険者ギルド(非ギルド員)

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